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ISSCC2010の後、サンノゼで開催されていたLED照明展示会に参加した。

 次に、家の電球が切れたときに、LED照明の値段が現在の半額になっていたら、電球の代わりに、電球互換LEDにしたいと思っている。

 他の人のブログを見ていても、プリウスを買った時に手に入れたエコポイントを使って、家中の電球をLED電球にしたという話があった。
チャンスと価格が折り合えば、即交換と思っている方々も多いだろう。

 筆者的には、あのさすような光が目を疲れさせないかと心配だが、人間の慣れと制御でなんとかなるんだろうと思いたい。

 半導体にルーツを持つ筆者としては、NECさんのブースにあったLED制御マイコンに興味を覚えた。LEDの光の量は、パルス幅変調のパルス幅で決まるそうだ。マイコンでパルス幅を変えた信号を生成してそれで、LEDを制御すれば明るさは自由自在。扇風機に1/Fノイズを利用したものがあるように、1/Fノイズを照明の制御に使えば、目が疲れなかったり、癒される照明ができそうだ。このあたりの特許争奪戦は始っているのだろう。
 ただ、気になるのは基本的にパルス幅制御という点だ。
人間の目は、意外に短いパルスに対してもピークが高ければ疲れを感じている可能性はある。ただ、そんな短いパルスは人間の経験の範囲にないために、それを「暗い」と認識しているだけに過ぎない。そのあたりの研究が進むことを期待するとともに、特許ネタの宝庫ではないかとも思っている。
光のピーク値を下げる技術が必要になる気がする。
市場規模は地球サイズだ。我と思わんエンジニア、研究者の参戦を期待する。

 LED照明を起点にした通信への応用も面白い。
ISSCC2010での、大学からの発表に、信号機のLEDの発光に情報を載せてそれを車側のイメージセンサーで受け取るというのがあった。
同じことを部屋の中(車の中)でやればとてもいい。
天井の照明から、部屋中の機器に情報を送るわけだ。
時刻、温度、位置、天気、予報などの情報を送れば受けた機器側で制御プログラムのパラメーターを変更でき、それによって、トータルの消費電力を減らしたりできる。課題は標準化だ。これはシリコンバレーの得意分野だ。
このLED照明の展示会に参加した人で始っているんじゃないだろうか?

 信号機の場合も同じだが、LED照明通信のライバル技術はRF通信だ。だが、秘匿性は高いし、コスト的にも有利。アドレス枯渇の心配も、標準化の問題も少ない。
 さらに赤外線LEDをLED照明に混ぜて(ブレンドして)おけば、体内の機器にも情報を送れる。しかも電波を使わないので、心臓ペースメーカーでも問題はない。
 受け取った情報を元に、時計ずれなどの異常があれば外界にアラートを立てる。(ピーピーとか)
 ISSCC2010にも体内埋め込み機器に関する発表があったはずだ。

この不景気2010年が技術の転換点である気がしている。
この時代に産まれた技術が未来を支える。

エンジニア、研究者のみなさん。萎縮するなかれ。
心に翼を。。。

もんでんや

拙著:PDF文庫はこちら



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2010.02.28 Sun l 学会聴講 l コメント (0) トラックバック (0) l top

ISSCC2010に参加した。
筆者的報告(感想)だ。

 有機半導体の分野がなんだか楽しいことになっている。
キルビーによって集積回路の時代が切り開かれた。
まさに、その特許明細書にあるような写真を見たのだ。
基本単位デバイスから引き出された接続領域(パッド)につながるむき出しの配線。
それらの配線がさらに複雑に引き回され回路を構成している。

 さらになんと、その相互接続はインクジェットプリンタで描くこともできるのだ。
動画のデモも見た。どこの家にでもありそうなプリンタにインクが挿入され、じゃかじゃかと音を立てて回路配線が描かれる。
後に、発表者に質問をしてみると配線だけではなくてトランジスタなどのデバイス部分もインクジェットプリンタで形成するべく研究がすすめられているとのことだ。
近い将来、全プリンタでシステムができあがるのに違いない。
 有機半導体の課題は動作速度のようだ。裏を返せば、放熱の問題が少ないと言える。
10層程度の積層は容易だろう。3次元で動作が遅いデバイス。
イメージは必然のごとく、脳にたどり着く。面白い発表が今後も続くだろう。
夢の宝庫だ。


 筆者のルーツはメモリーだ。メモリーのセッションをみると定性的な基本部分はあまり変わらず、デザインルールなどの定量的な進歩の話と、枠組みを変えてしまうような革新の話とがある。
前者に属する発表を聞くとなんだか過去にタイムスリップしたかの錯覚にとらわれる。若かったころの苦しくも楽しかった思い出が蘇り、幽体離脱の体となる。
 革新の話では、その昔、理想と信じたメモリ方式が現実の取り組みとして、目の前にまさに現れた。
配線の交差部がメモリになる。それだけ。
トライしているのはシリコンバレーベンチャーだ。
日本では景気の悪い話ばかりで、縮み上がっているときに、ここにはメモリ冒険者達がいる。
嬉しくなって、講演者に名刺交換を求めに行った。

 一昔前なら、決してISSCCに投稿すらされなかったであろう話も立派なセッションをなしている。
バイオからみ、医療からみだ。痛みを和らげたり、検査をしたり。
そういう分野には、やさしい半導体が必要になる。ヒートシンクが必要な野蛮なデバイスでは、低温やけどを起こしてしまう。
低消費電力、低エネルギー通信と具体的な開発課題に落ちていく。
有機半導体との相性もいいに違いない。


 技術の転換点は再生のための起点でもある。
後の世代の技術史研究者が2010年を特別な年として記憶するように期待したい。

門でんや
PDF文庫もご覧ください。



2010.02.16 Tue l 学会聴講 l コメント (0) トラックバック (0) l top