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反撃が始まった、。
しかもLinuxの守護神たる、Open Invention Network(OIN)を剣としている。
新しいフェーズになった。

 MSは訴訟の定石通り、まずは小さい城を落とそうとした。そこで判例を確保し、訴訟資金も生みだす。
たが思わぬ敵を引きずり出したのではないか?

 OINはLinuxの自衛組織だ。
加盟すれば訴えられた時の盾となってくれる。訴えた企業の特許を使っているのではなく、OINの特許を使っているのだよ。とはねのけられる。
Googleもこの組織に参加している。
http://www.rbbtoday.com/article/2007/08/07/44069.html
日本ではRubyアソシエーションも加わった。
http://news.livedoor.com/article/detail/4747571/

 ところが今回はOINを矛(剣)とした。
OINから権利を譲り受けて逆に訴えたのだ。
攻撃は最大の防御。

調べてみるとOINを譲渡人とする特許はわずか4件しかない。渡した相手(譲受人)は全てSalesForce.com
特許を集め、盾として提供しているところが武器の提供をはじめた最初のケースではないか?

仕組んだのはこの「天敵」弁護士に違いあるまい。
http://jp.techcrunch.com/archives/20100625salesforce-countersues-microsoft-patent-boies/

 さて、実際の特許を見ていってみよう。
先の記事によると、武器として選んだのは5件の特許だ。
このうち1件は自社特許であり、他の1件はMINOR VENTURESというところから、2007年10月に入手している。そして残りの3件をOINから譲り受けている。(契約)時期は今年の5月初旬。特許庁への登録は6月だ。これら3件の特許は、
6813633 Dynamic multi-level cache manager
内容は、一言でいうと、「マルチCPU、ネットワーククライアントを想定したキャッシュ管理」だ。

6918059 Method and system for handling errors in a distributed computer system
同じく「クラウドにおけるエラー処理」

7024454 Work sharing and communicating in a web site system
同じく「サーバー分割の話。医療系を例示。」

どれも、今は普通に使っているんじゃないかと思えるものばかりだ。

いずれも技術起源は2000年前後だ。
シリコンバレーでネットバブルがはじける直前だ。

ここで、Wikiでネットバブルについて復習しておこう。

インターネット・バブル
「インターネット・バブル(Internet Bubble)とは、1990年代末期に、アメリカ合衆国の市場を中心に起った、インターネット関連企業の実需投資や株式投資の異常な高潮である。「ドットコム会社」と呼ばれる多くのIT関連ベンチャーが設立され、1999年から2000年にかけて株価が異常に上昇したが、2001年にかけてバブルははじけた。」とのことだ。

 バブルの真っ只中で多くのエンジニアは、夢をみた。それを特許の形で後世に残した。そして、今、子孫たる企業を助けている。
不思議なめぐりあわせだ。

 さて、OINがSalesForceに譲り渡した特許は4件だ。
ところが、訴訟に使われているものは3件。
そう、もうひとつ隠しだまがあるようなのだ。
7251745 Transparent TCP connection failover
がそれだ。クレーム数116。クラウド時のエラー処理に関しての特許だ。それも、かなり下層レベルでの処理を行っている話だ。図面も多く力強さを感じる。ただ、こういう表に出ない部分の話では侵害していると言うには、証拠集めが大変なのかもしれない。だから反訴には間に合わなかったのか?。
 また、この特許にはGovernment has certain rights in this invention. との記述がある。国に権利の一部があるようだ。それで、訴訟リストからはずしたのか? だが、他の3件と合わせて譲り受けたのはなぜなのだろう?。権利関係を明確にすれば、強力な武器になるという判断があったのかもしれない。いずれにせよ、今後の要注意特許だ。

 さて、MSの次の手は何になるのだろう?
悪役になる覚悟をして、他の複数の企業を訴えるのも手だろう。
OINが守護神だとしても、剣の数には限りがある。
反訴のために(一時的にせよ)、譲り渡せる特許には限りがある。
一社に渡してしまったら、他には渡せない。他の企業は同じ特許を使って反訴はできない。その会社に処分権限がある排他的権利である特許権だからこそ、それを使って訴え(反訴)を起こすことができるからだ。
 そうすれば、何が起こるのだろうか?
MSに訴えられた企業群が一時的にせよ、部分的にせよ、「経営統合」を行い、まとまって、「反訴」に出るかもしれない。
もしくは、(気質的に)考えにくいが、全てMSが飲み込む。
激動の予兆だ。



門伝也(もんでんや)
http://mondenya.blog49.fc2.com/

https://twitter.com/mondenya
メイキング的な話をつぶやき中。

参考:ブログを書くにあたって用いた中間データはこちら。
http://www.cerbonics.net/books/PAY3/Salesforce_vs_MS/index.htm


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2010.07.07 Wed l 訴訟 l コメント (0) トラックバック (0) l top

「マイクロソフト、セールスフォース・ドットコムを特許侵害で提訴」
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20413621,00.htmとのことだ。
訴状によると、武器は下記の9件の特許だ。

7,251,653 Method and system for mapping between logical data and physical data
6,542,164 Timing and velocity control for displaying graphical information
6,281,879 Timing and velocity control for displaying graphical information
6,263,352 Automated web site creation using template driven generation of active server page applications
6,122,558 Aggregation of system settings into objects
5,941,947 System and method for controlling access to data entities in a computer network
5,845,077 Method and system for identifying and obtaining computer software from a remote computer
5,742,768 System and method for providing and displaying a web page having an embedded menu
5,644,737 Method and system for stacking toolbars in a computer display

このうち、
5,742,768 System and method for providing and displaying a web page having an embedded menu
は元々、Silicon Graphics, Incの特許だったようだ。1998年4月に成立している。
2001年9月にSGIからMSに権利の移動が記録されている。
そのころSGIでは、構造改革が行われていたようだ。それに合わせた資産の棚卸だったのかもしれない。
総クレーム数は20。このうち、3つが独立クレームであり、それ以外は従属クレームだ。
いずれもアプレットを利用したメニュー管理に関している。
サーバー側も含めて権利を取れるように工夫しているようだ。

 さて、ここでは視点を引いて、これら9件の特許の全体像を見てみよう。
成立時の譲受人(権利者)は先の特許を除いて全てMSだ。社内エンジニア達の仕事だろう。
技術期限が1994年、95年に遡るものが6件ある。
筆頭米国分類を見ると、どういう特許であるかが概ね分かる。
IT特許の住処である米国分類700番台が当然のように多い。
709、715が共に3件づつある。
709を見てみると、Windows Updateを思わせる5,845,077が見つかる。
709/221 Reconfiguringに筆頭米国分類がある特許だ。
この特許のクレーム数は24.そのうち、5つが独立クレームだ。
WindowsUpdateの仕組みは当初は、斬新だったが、その後、一般化している。
要注意特許と言えるだろう。

発明者の観点から見てみる。
発明者は約30人。筆頭発明者は、8人。
一人の発明者(G;C氏)のみが2つの特許で筆頭発明者となっているが、それ以外の筆頭発明者はそれぞれ1件の特許において、筆頭となっているのみだ。
誰か一人の発明者が、「俺の特許を使って、訴えろー!」と言ったのではなく、
会社として冷静な判断の元に集められた特許であることが伺われる。

特許のクレーム数で見れば
5,941,947 System and method for controlling access to data entities in a computer network
が最も多い。クレーム数は66だ。内容はアクセス権の管理に関するものだ。
訴えられた場合、クレーム数の多い特許はとても疲れる。
その意味で、この特許も要注意だろう。

 MSはソフト会社としては特許に熱心だ。
特許件数も本稿執筆時に15、000件を超えている。
それに対してライバルであるAPPLEは3、000件程度であり、
GOOGLEでは500件にも満たない。
ただし、これらには、他から購入した特許は含まれていないので注意願いたい。
それにしても、件数差は圧倒的だ。
アンチパテントに支配されているシリコンバレーと、そこから離れたところに本社を持つ企業の社風の違いだろうか?

 特許には金がかかる。出願し、成立するまでに、特許事務所にかかる費用。
成立後、権利を維持するためにかかる費用。それなのに特許には使用期限がある。
それを超えると、公開技術となってしまって、お金を産まない。
投資を回収できないのだ。今回の訴訟にもその期限切れが近い特許が相当数含まれている。
投資回収の最後のチャンスなのだ。

 MSを巡るビジネス環境を見ていると、GOOGL、APPLEしかり、強敵だらけだ。
収支改善のためにも、溜め込んだ特許をお金に換える取り組みが今後、盛んになるのではないだろうか?

山田(門伝也:もん でんや)

補足:下記のリンク先に本稿を執筆するに際して用いた中間データがあるのでそちらもご覧いただきたい。
関係者にはお役に立てると思う。

What's new. Jun-01-2010
MS_vs_SalesForce patents REPORTDB / basic part




2010.06.02 Wed l 訴訟 l コメント (0) トラックバック (0) l top