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2003年頃に書いた文章の使いまわしですが、面白いかもと転載します。
==
 私は半導体出身ですが、今、半導体産業そのものに魅力を感じません。
「ユビキタスネットワーク」という言葉が昨今、はやりですが、それについても、
昔は、感動を覚えたのですが、今は、あまり響くものがありません。
 地下鉄の中で、メールを打っている人が増えたように、深夜番組をホームサー
バーで録画したものを、携帯の画面で速送りで見ている人が増えるだけじゃない
かって思ったりします。
 私は現在、キャッチコピー「命を救う半導体」を目下、宣伝中です。
なぜ、このコピーにたどりついたのか?なぜ、このコピーを宣伝しているのかを
振り返って検証してみたいと思っています。

 この1年、「セルボニクス特許探検隊」を毎週発行するために、かなり苦労し
ました。最初は、自分のテリトリーである半導体からはじめようと思ったのです
が、「新しいものをかじってみたい」という想いから、まずMEMSについて調べて
みました。MEMSが登場した時に見た、シリコン基板上で動くモーターやアクチュ
エーターの映像の記憶が頭に残っていたからでもあります。また、有名なT社の
DMDの映像も頭にありました。
http://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20020606.html
 アナログデバイシズのジャイロスコープの特許を見つけたときに単純に面白い
と思いました。そして、その半年後に、この製品化の話がWEBに登場し、何か
預言者のような気分になったのを覚えています。
 そのMEMSの調査の際に、あるエンジニアを発見しその生き様に感動しまし
た。
http://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20020711.html
彼の行き付く先には間違いなく、リソ工程の革命があると感じました。
すなわち、ステッパーがインクジェットプリンタに置き換わる時代です。

 ここらあたりから、次第に半導体から離れていってしまいます。
フォトニック結晶について調べました。
http://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20020822.html
RFへの応用が期待されることを確信しました。またMEMSによるアダプティ
ブアンテナを組み合わせると、半導体チップ上にイージスシステムが多数寝てい
る状況
が見えました。

 ネタに困った私は、昨今話題のバイオ系に触手を伸ばし始めました。
まず、バイオインフォマティクスに目をやりました。
http://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20020905.html
 「バイオインフォマティクス関連の明細書の図面を見ていると、
見慣れたコンピュータ関係の図面やフローチャートがあるかと思うと、
遺伝子などの配列の図面や、解析時にもちいるグラフなどが混在して現れます。
学際というのはこういうところ(場所)を言うのだろうなと漠然と感じます。」
というふうに、私にとってのフロンティアを感じました。

 そして、とうとうDNAシリーズに手を出してしまったのです。
http://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20020912.html
http://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20020926.html

 さらに、魔界「遺伝子操作生物」に入り込んでしまったのです。
米国では、「人間以外のすべての生物」が特許の対象になるのです。
「。。。。のねずみ」という具合です。

 さらにネタに困った私は、シリーズものをはじめました。
大学の保有する米国特許について調べてみようと思ったわけです。
件数の多い大学をピックアップして、さらにそれらの大学について過去20年の
特許を調べました。
MIThttp://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20030213.html
Stanford: http://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20030320.html
カリフォルニア大学http://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20030327.html
テキサス大学http://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20030403.html
KAISThttp://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20030417.html
CALTEC:http://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20030424.html
まとめhttp://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20030508.html

結果は、衝撃的でした。

●「米国のハイテクは、すでに大々的にバイオにシフトしている。」
という確信でした。

 半導体にルーツを持つものとして、無力感を感じました。
「このまま、『時代遅れの半導体』に固執していかないと生きていけないのか?」
自問しました。
 そんな時です。だらだらと深夜番組を見ているとスタートレックの映画をやっ
ていたのです。思わず見入ってしまいました。ドクターマッコイが使っている医
療機器に目を奪われました。
額に当てるだけで、脳内の血栓が除去できる小さな
機械。これはMEMSアレーアンテナでできる!と直感しました。
 飲むだけで透析が不要になる錠剤。これは、数ミクロン角からなるケミカル、
MEMS半導体チップ(粉チップ)
でできる!とも思いました。む、電力は??
RFでは無理だ。コイル径が小さすぎる。その時、以前調査したとこのある燃料電池が思い浮かびました。
http://www.cerbonics.net/~semi/tanken/back/20021024.html
粉チップの電源としては、燃料電池が有効じゃないかと思えました。

 地下鉄に乗って、以上のことをうつらうつら考えていると、ふっと、
キャッチコピー「命を救う半導体」が浮かんできたのです。
半導体事業を未来に導くキーコンセプトではないかと感じています。

 最近、知的財産権に興味を持っている若い学生さんから、
『知財で未来を設計する』という素敵な言葉を教えていただきました。
 「命を救う半導体」という未来イメージを知財から設計できないだろうかと考
えています。その設計の際に、特許情報が活用できると確信しています。


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2009.02.08 Sun l CNET連動企画 l コメント (2) トラックバック (0) l top

大学のTLOで、民間企業の開発部門で切られた派遣の人達を雇って、技術立国の基礎固めを行う。という提案を前々回および前回のエントリーで行った
 でも、TLOの方々から、
「やったこともないプロトタイプの開発とか、派遣のエンジニアの管理なんかできないよ。」という声が聞こえてきそうだ。
 なら、退職された団塊の世代のエンジニアにもうひと働きしてもらうのはどうだろうか?
5年くらいの任期付職員としてTLOで雇えばよい。
 どういうひとを雇えばいいかにも特許情報が役にたつ。継続して何かの開発を行った経験があって、特許マインドが豊かで、特許取得の実績も多い。そういう人を探して、開発や派遣の管理をやってもらえばよい。
 団塊の世代の方たちは、技術立国日本を体験されている。また、同時に今後の日本の技術開発に不安を感じられているだろう。
 ●TLOに大学の研究を開発段階へと進める役割を与える。
プロトタイプを作り、周辺特許も含めて抑える。
今はまさに好機だ。


 当然、国からの予算的なバックアップは必須だ。
 でもいったいどれだけの費用がかかるのだろうか?
簡単に計算をしてみよう。
 すべての大学のTLOに開発エンジニアを割り当てるのは無駄が多い。地域ごとに拠点大学を決めて、そこのTLOに集約しよう。どこの大学に集約するかは、特許マインドを反映するものとして、特許取得件数を考えればよい。
 前々回のエントリーから、米国特許の取得件数が多いのは下記の大学だ。
1:大阪大学   
2:東京工業大学 
3:東京大学   
4:東北大学   
5:名古屋大学  
6:京都大学   
7:広島大学   
8:九州大学   
ざっと、日本全体で拠点開発TLOを10箇所配置するとする。
各拠点ごとに、開発派遣エンジニアを100名配置し、退職団塊エンジニアの方を10名配置するとする。ざっと、1人月100万円の費用がかかったとして、1拠点あたり、毎月1億1千万円の費用がかかる。開発資材費として、毎月9000万円を考えると、切のいい数字として、1拠点あたりの毎月の開発費は2億円だ。
国内10拠点で毎月20億円。
 さて、どのくらいの期間この体制を続けるべきか?
景気は「全治3年」という説もあるが、本格的な回復までには5年は見たほうがいいだろう。また、5年は開発期間としても長すぎず、短すぎず、ちょうどいいだろう。
5年、60ヶ月を先の20億円にかけると、総額1200億円だ。
これだけかければ景気回復期に日本の大学で産まれた研究が、日本企業から製品となって世の中に出て行って、新たな雇用を生み、消費が喚起されて、税収が増えるのではないだろうか?
 この1200億円は高いだろうか?
定額給付金は、2兆円だそうだ。その1/10に満たない金額だ。
定額給付金のGDP押し上げ効果は0.2%程度だという。それよりも、この1200億円の方が5年後のGDPの押し上げ効果は高いのではないだろうか?
5年後の雇用の吸収能力も大きいと期待できないだろうか?

ブログサイトにも載せました。
門 伝也


2009.01.10 Sat l CNET連動企画 l コメント (0) トラックバック (0) l top

前回のエントリーで
●大学のTLOに国の予算をつけて、開発部門で切られた派遣の人達をバックエンド込みで雇う
という提案を行った。
「科学技術立国」の土台作り。まさに、未来につながる「公共事業」だ
詳細は前回のエントリーを参照のこと。

さて、その際、
日本の大学関連の米国特許の取得状況が心もとないという話をした。
今回のエントリーでは、その部分に焦点をあてたい。

 調査期間は1980年から2002年までの23年間。

まずは、日本の大学

 件数の多い順に主要大学をリストアップする。
1:大阪大学   52件(内27件は、財団法人、阪大微生物研究会所有。)
2:東京工業大学 49件
3:東京大学   45件
4:東北大学   36件
5:名古屋大学  34件
6:京都大学   23件
7:広島大学   22件
8:九州大学   19件

上記の国立大学の合計件数は280件となる。

特許の中で目を引くものを見ていきたいと思う。
●大阪大学:
Number(Issue)4,464,578( August 7, 1984 )
Title:Wave energy converter.
波力発電に関するもののようだ。

財団法人、阪大微生物研究会所有のものを見ると、
抗原たんぱく質やDNA関連の特許が見られる。Stabilized live vaccineのよう
なワクチン関係の特許も。

●東京大学
超伝導関連特許が多いようで目を引く。
特に「超電導共役光伝導の基本物質Cusub2 Oを有する超電導オプトエレクトロニク素子」というような、光関連デバイスと関係したものが多いようだ。

Number(Issue):5,939,632( August 17, 1999 )
Title:Micromechanical accelerometer.
というものがあり、MEMS応用の加速度計だろうか。ケンブリッジ大学および松下電器との共有特許となっている。

●東京工業大学
Number(Issue)4,217,172( August 12, 1980 )
Title:Coolant system and cooling method utilizing two-phase flow for
nuclear fusion reactor 核融合炉の冷却システムに関するもののようだ。

Number(Issue):5,236,864( August 17, 1993 )
Title:Method of manufacturing a surface-emitting type semiconductor
laser device.面発行半導体レーザーに関する特許で、SANYOなどとの共有特許。

その他、X線露光用のマスクに関する特許もある。

●広島大学
Number(Issue):5,889,424( March 30, 1999 )
Title:Pulse width modulation operation circuit
パルス変調回路技術に関するものがある。

●東北大学
Number(Issue):5,923,779( July 13, 1999 )
Title:Computing circuit having an instantaneous recognition function and
instantaneous recognition method.
タイトル:瞬間的な認識機能および瞬間的な認識方法を有するコンピューティング回路
The present invention has as an object thereof to provide an intelligent
electronical system which conducts the real-time recognition of real
world data and makes decisions with respect to the data;
がある。

●京都大学
多孔性アルミニウム酸化膜に関連した特許が複数ある。

次に、産学連携に注目して、いくつかの民間企業がどういう大学と共有特許を持っているかということを見ていきたい。

フマキラーが広島大学とアレルゲンの精製やDNAに関する特許を共有している。

富士通が名古屋大学と波長多重化光源についての特許を共有している。

豊田合成と名古屋大学とのGaN関係の共有特許が目を引く。製法、装置、発光素子に関するものなどいくつかある。

次は、スタンフォード大学
約1100件の特許がある。

 特許からみた発明人口は約1300人。筆頭発明人口は約600人。

 まず、筆頭米国分類の主分類から、どのような特許があるのかをおおまかに把握する。筆頭米国分類集計をソートして件数の多いものをピックアップ。

米国分類435:171件 生化学
米国分類359:61件  光通信部品類
米国分類385:61件  光導波路
米国分類324:59件  電気:計測テスト
米国分類514:56件  薬
米国分類356:54件  光学:計測、テスト

となる。
光関係が目立っているようだ、中身をみると、
●光ファイバ増幅器、カプラ
●ホログラフィック記憶
●光変調器
●光MEMS関連
という具合に、光通信関係が多い。

人(先生)に注目してみると、
発明者別集計から件数の多い人を抽出した。
Shaw;HerbertJ. 68 patents
Digonnet;MichelJ.F. 40
Byer;RobertL. 38
Kino;GordonS. 38
Quate;CalvinF. 28
Kim;ByoungY. 27
Zare;RichardN. 26
Pauly;JohnM. 25
Fejer;MartinM. 23
Crabtree;GeraldR. 20

この中の何人かの特許を紹介する。

●Shaw;HerbertJ.
4,493,528 Fiber optic directional coupler.
4,410,275 Fiber optic rotation sensor.
4,556,279 Passive fiber optic multiplexer.
4,469,397 Fiber optic resonator.
4,530,097 Brillouin ring laser
4,676,585 Continuously variable fiber optic delay line.
4,554,510 Switching fiber optic amplifier.
4,652,079 High speed pulse train generator.
4,938,556 Superfluorescent broadband fiber laser source.
4,828,350 Fiber optic mode selector.
4,952,059 Reentrant fiber raman gyroscope.
5,106,193 Optical waveguide amplifier source gyroscope.
5,537,671 Technique of reducing the Kerr effect and extending the dynamic
range in a brillouin fiber optic gyroscope.
という具合に、光ファイバを中心とした多くの光通信関係の発明者だ。

●Digonnet;MichelJ.F.
この方は先のShaw先生と同じグループだったようだ。

●Byer;RobertL.
4,213,060 Tunable infrared source employing Raman mixing.
4,555,786 High power solid state laser.
4,701,928 Diode laser pumped co-doped laser.
4,731,787 Monolithic phasematched laser harmonic generator.
4,902,127 Eye-safe coherent laser radar.
4,951,294 Diode pumped modelocked solid state laser
5,227,911 Monolithic total internal reflection optical resonator.
5,800,767 Electric field domain patterning.
6,108,121 Micromachined high reflectance deformable mirror.
などという具合に、(固体)レーザー関係が多い。

●Kino;GordonS
4,781,425 Fiber optic apparatus and method for spectrum analysis and filtering.
 Filed:February 18, 1966  Issue:November 1, 1988
 と20年かけて成立した特許だ。
4,503,708 Reflection acoustic microscope for precision differential phase imaging.
4,627,730 Optical scanning microscope.
4,683,750 Thermal acoustic probe.
4,872,738 Acousto-optic fiber-optic frequency shifter using periodic contact with a surface acoustic wave
5,022,743 Scanning confocal optical microscope
5,073,018 Correlation microscope
5,121,256 Lithography system employing a solid immersion lens.
5,907,425 Miniature scanning confocal microscope.
5,982,716 Magneto-optic recording system employing near field optics.
6,075,639 Micromachined scanning torsion mirror and method.
6,172,789 Light scanning device and confocal optical device using the same.
6,477,298 Collection mode lens system
という具合に、光に関連した非常に幅広い技術開発をされているようだ。

●Crabtree;GeraldR.
件数は20件程度と少ないが、非常に特徴的な権利取得をされている。
以下の特許は技術起源が1993年で、同一特許出願を分割継続を行って育てているものと思われる。
5,830,462 Regulated transcription of targeted genes and other biological events.
同一名称で
5,869,337、5,871,753、6,011,018、6,046,047、6,063,625、6,140,120、6,165,787
などの特許がある。遺伝子治療の薬に関係していると思われる。
さらに
5,837,840 NF-AT polypeptides and polynucleotides.について
6,096,515、6,171,781、6,312,899、6,388,052と派生している。
こちらは、「ポリペプチドをコード化」に関係する特許で、
「トランスジェニック人間以外の動物を生産する方法に提供する。」とのことで、
いわゆるクローン技術に関係するものと思われる。

次は、MITの場合。

約2000件の特許がある。

 まず、権利者別集計を見てみた。
当初、企業との共同特許がバンバンあるのかと思っていだが、あまり目立たず、MITの単独特許が多いようだ。

 医療機関との共有特許もある。
Children's Medical Center Corporationとの例を上げると
Number(Issue):6,095,148( August 1, 2000 )
Title:Neuronal stimulation using electrically conducting polymers
abstractには
In one embodiment, electrically conducting biocompatible polymers may
be used alone or in combination with a polymeric support for in vitro
nerve cell regeneration, or in vivo to aid in healing nervous tissue
defects.とあり、導電性のあるバイオコンパティブルポリマーを用いることによって、神経細胞の再生ができるという特許のようだ。

 筆頭米国分類をみるともっとも多いのは435番で、DNA、たんぱく質関連の特許が多いようだ。

 半導体関連を見ていく。
メモリ365関連を見ると、
Three-transistor content addressable memory. や

Circuit technique for logic integrated DRAM with SIMD architecture and a
method for controlling low-power, high-speed and highly reliable
operation.がある。こちらの方はNECとの共有特許。

 続いて、半導体製造プロセス関連438を見る。
Nanoparticle-based electrical, chemical, and mechanical structures and
methods of making same.が目を引く。パターン形成がプリントするように
できる特許と思われる。

 超伝導関連505も目を引く。酸化物系の超伝導物質が多いようだ。

 発明者別集計を見ていく。
発明人口は1980年以降、約2500人。
特許件数が100を超える人にLanger;RobertS.氏がいる。バイオ関連特許が多いようだ。

感想:
MITの場合、MIT名義の米国特許が約2000件あった。
日本の国立大学の場合、主要大学の米国特許保有数を合計してもその10分の1程度だ。さらにクレーム数解析の結果を見るとMITの場合、クレーム数が50以上のものが多数存在するのに対して日本の場合、ほんの数件だ。すなわちクレーム数ベースで比較するとその差はさらに大きくなると思われる。米国特許であるという点を考慮しても特許件数が少ないと言わざる負えない。
 日本の大学の場合、大学の先生のアイデアは企業から出願され、大学の先生は発明者に留まるという話を良く耳にする。MITの勢いを見ていると日本の大学が「それでいいわけがない」と強く感じる。

 特に、特許に対する感性や態度は、ほとんど、その組織の文化と言ってもよい。
なかなか、その流れは変わらない
 そこで、冒頭の提案となる。
 TLOが主体となって、開発経験のある派遣技術者をバックエンドともども使って、技術や製品のプロトタイプまでを作って、周辺特許を押さえる。
TLOにそういう機能を持たせる。今、世の中はピンチだがチャンスとも言える。
大きな変化は苦難の時代にこそ生まれる。
「科学技術立国日本」が幻に終わらないことを切に願う。

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2009.01.05 Mon l CNET連動企画 l コメント (2) トラックバック (0) l top
 製造部門での派遣切りに続くのは、開発部門での派遣、請け負い切り(エンジニア派遣切り)だろう。これは静かに行われるに違いない。
 開発品種の選択と集中の結果であるからだ。
製品ラインアップの絞込み。展開品種の削減。
マザー製品のみを正社員のみで開発することで、正社員の雇用の確保と開発費の削減を実現する。会社の上層部が短絡的に考えそうなことだ。
 ほんの1年足らず前までは、「エンジニアが足りない」とぼやいていた人達が、今度は、その正反対のことに手を染める。
 「苦渋の決断」と誰もが諦め顔だ。
「科学技術立国」という掛け声を誰もが忘れようとする。
それで、本当にいいのだろうか?

 ここで、ひとつの異論を提案したいと思う。
●大学のTLOに国の予算をつけて、開発部門で切られた派遣の人達をバックエンド込みで雇う。
という提案だ。
なお、
TLOはTechnology Licensing Organization(技術移転機関)の略。

 エンジニア派遣を行っている優れた企業は、特定派遣であることが多い。派遣されているエンジニアは、特定派遣の場合は、派遣会社の正社員である。正社員であるので、派遣元の企業で教育を受け、アドバイスをもらえるメンターや先輩社員までがいる。ただ単に顧客側に放り込まれているわけではない。
 「ちょっと、考えてみます。」と言って、派遣先の要望を吸い上げて、バックエンドの人と相談して、最適な方法を考える。その案を、派遣先に提案する。そうすると、「あそこの派遣会社の人は、若いのにできる!」と評判になる。バックエンドの人は非常に重要な役割を果たしている。
 ノウハウは個人に蓄積されるのではなく人と人の間に貯まるのだ。
思い出してみて欲しい。
何かやろうとしたときに、必ず身近な誰かに相談しなかっただろうか?
。。。だよね?とか、あれどうだっけ?
とか。
 開発部門で働いていた派遣エンジニアの人達のノウハウや力を温存するには、バックエンド(にいるベテランエンジニア)込みで考えることが重要なのだ。

 さて、一方、大学の状況を振り返ってみよう。
大学の人達は、先端的な研究は得意だが、製品化や製品化にまつわる泥臭いことは苦手だ。論文や学会発表もできないしね。TLOもあるにはあるが、企業のサポートを積極的に行うには戦力不足だ。

 TLOに予算をつけて、開発経験のあるエンジニアを派遣元のバックエンド込みで、派遣してもらう。これをすれば、事態は一気に好転するように思える。

 研究や、開発は、そこに行って見ないとわからないことが多い。
そのために普通はプロトタイプをつくり問題点を探り、解決策を特許の形で固定化する。そうやって周辺特許を押さえて、技術の土台を確固たるものにしていく。
そのために、彼らは大きな戦力となってくれるはずだ。

 「科学技術立国」の土台作り。まさに、未来につながる「公共事業」だ。

 派遣業界に対するばら撒きにならないようにするには、特許という測定装置を入れるのがよい。派遣費用を値切れば、開発経験の浅い人だけがくるので、その世話が増えて、特許どころではなくなる。
 逆に、開発経験の豊かな人が来てくれれば、大学の研究者は、アイデアを出すことだけに専念できる。

 また、大学の研究者は新しい測定装置を購入するのに熱心だ。
TLOに行った税金が、装置に化けただけというのも、特許(出願)を監視していればわかる。

 私が以前、行った米国特許調査でも、
特許の件数は、日本の大学関係を全て足しても、スタンフォード大学ひとつにもかなわない。
これを、同じレベルまで引き上げる秘策ではないかと思う。

 ご批判、ご意見をお待ちしています。


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2008.12.23 Tue l CNET連動企画 l コメント (0) トラックバック (0) l top

●燃料電池今昔物語


 今回は、燃料電池関係について見ていきたいと思います。

 データ入り口はここです。
ここで、まず、Assignee分析、優先年表示を見ていきます。
これは、横軸が技術起源年をあらわしています。
いつ頃、どの企業が燃料電池開発にアクティブであったかが、わかります。

 アポロ宇宙船のエネルギー源として使われたというだけあって、
プレイヤーも多く、しかも1980年以前からの活動があったようです。
これでは、あまりに多すぎて全貌が把握できないので、上位20社程度をまとめてみました。

 これを見ていると面白いことに気が付きます。おおまかに3つのグループがあります。

1:1980年前半にピークがあるグループ
Energy Research Corporation
Hitachi Ltd
Mitsubishi Denki
United Technologies Corporation

2:1990年前後にピークがあるグループ
Fuji Electric
Institute of Gas Technology
International Fuel Cells
Kabushiki Kaisha Toshiba
NGK Insulators

3:最近にピークがあるグループ
Ballard Power Systems
General Motors
Honda Giken Kogyo
Matsushita Electric
Plug Power
Siemens Westinghouse Power
Toyota Jidosha
となります。

ここで、過去にピークがあった
United Technologies Corporationについて詳しく見ていきたいと思います。

さてUnited Technologies Corporationの燃料電池はどうなってしまったのでしょうか?
この会社自身は現在も存在していてしかもかなり大きな会社です。だとしたら考えられることは、
(1)事業部か子会社を作った?
(2)事業部門ごと売却した?

 そこで、探検です。まず、United Technologiesの発明者をリストアップします。
約60人の発明者がいることがわかりました。
それらの発明者がなした特許をもとの全体母集団から抽出します。そして、その和集合を権利者別に集計します。
 過去にUnited Technologiresにいた技術者たちが、今も燃料電池関係の現役発明者として仕事をしているとしたらどこにいるかを、このデータから読み取ることができます。

 これを見ると、United_Technologiesの発明者が大部分、まず、International Fuel Cellsに移って、
次にUTC Fuel Cellsに移っていることがわかります。
こういう場合はたいていが社名変更です。

 検索エンジンで検索するとUnited Technologiesのホームページはhttp://www.utc.com/ であることがわかります。
燃料電池関係のホームページは http://www.utcfuelcells.com/whoweare/ourcompany.shtml と思われます。
 これらの情報から、United_Technologiesの燃料電池部門はまずInterlational Fuel Cellsという名称になって、次にUTC Fuel Cellsになったようです。

 これらの情報は上場企業の場合は、http://www.sec.gov/のデータベースから確認することもできるのですが、資料が膨大なためなかなか困難です。

 ベンチャー企業など上場前の企業の場合、こういうデータベースにも登録されていませんし、その歴史を追いかけることはなかなか困難なのですが、このように発明者に注目してトレースすると比較的容易にわかることがあります。

 もちろん、スピンアウトやヘッドハンティングの状況も見えてきます。

 今回は、個別の依頼に対して用いるツールを使って分析してみました。

 特許情報は、先行技術調査以外にも色々と用いることができます。
その性格上、WEBで公開できないものも多々あります。

門 伝也

ブログサイトにも載せました。
また、
米国特許調査、解析ポータルサイトもよろしくお願いします。




2008.12.17 Wed l CNET連動企画 l コメント (0) トラックバック (0) l top