前々回、前回と無線LANに関する特許侵害訴訟で話題となっている、CSIROの持つ米国特許について報告した。
今回は、その中で、「気になる動き」のある米国特許6879579をさらに見ていこうと思う。
気になった点は、前回の投稿で述べたように、
「6879579の場合は、Assignmentが3回ある。
Assignment1では、3人の発明者がCSIROに権利を譲渡している。
Assignemnt2では、発明者が一人減って、二人追加されている。
また、譲受人がCSIROに加えて、M大学が追加されている。」
という具合に譲受人の変動が多いことだ。
ところが、全文明細を見てみると、この原稿執筆時点(2009.3.29)でassigneeはCSIROのみとなっている。他方、発明者は変わっていない。assigneeからM大学が消えている?!
ライセンス交渉を行う場合には、窓口がひとつの方が有利な交渉ができる。
それを意識しているのだろうか? 水面下で何かが始っている。そういう気がする。
さて、この579特許を注視しているのはどこだろうか?
米国特許庁の検索ページからは、
References Cited と Referenced By のふたつの情報を知ることができる。
最初の"References Cited"はその特許出願の際に、審査官が先行事例として引いたものや自己申告した特許が記載されている。引用特許群だ。
それに対して、"Referenced By"の方は逆に、他の特許の審査の過程などで、他の特許の先行事例としてこの特許が引用されたものを示している。被引用群だ。引用の方はその特許の審査完了、特許成立の時点で確定しているために、WEB公報の中では書誌部に確定的に記載されている。他方、被引用群は時事刻々変化するために、サーチエンジンへのリンクとなっていて自動的にその時点での被引用特許を引いてきてくれる。
これもとても便利な機能だ。
この「Referenced By」のリンクをクリックすると、下記の特許群が出てくる。
1 7,443,808 Networking methods and apparatus
2 7,406,319 WLAN having load balancing by access point admission/termination
3 7,400,901 WLAN having load balancing based on access point loading
4 7,324,468 System and method for medium access control in a power-save network
5 7,277,737 Method for power-saving operation of communication terminals in a communication system in especially in a wireless communication systems
6 7,272,119 Methods and systems for quality of service in networks comprising wireless devices
7 7,130,916 Linking frame data by inserting qualifiers in control blocks
8 7,020,117 Command processing method and radio communication apparatus
被引用数(Ref By)は8だ。
579特許の場合は成立年が2005年だ。それを考慮すると、被引用数は比較的多いのではないかと思う。これから、審査官達が579特許を重要だと考えていると推定してもあながち間違いではないだろう。
上記の被引用特許群のassigneeは下記の通りだ。
7,443,808 Coaxsys, Inc. (Los Gatos, CA)
7,406,319 AT&T Corp. (New York, NY)
7,400,901 AT&T Corp. (New York, NY)
7,324,468 Broadcom Corporation (Irvine, CA)
7,277,737 Bosch GmbH; Robert (Stuttgart, DE)
7,272,119 Sharp Laboratories of America, Inc. (Camas, WA)
7,130,916 International Business Machines Corporation (Armonk, NY)
7,020,117 Sony Corporation (Tokyo, JP)
と、有名所とがちんこ勝負?をしているようだ。
発明は、人間の個人個人の脳細胞に生を受ける。資本金の額にも、従業員数にも基本的にはよらない。
個人企業とも言える研究者が大企業と渡り合っているのをみるのもなかなか痛快だ。
そしてそれを検索、調査することで誰もがその存在と内容を知ることができる。
これらは、特許制度という人類の英知が生み出した枠組みのすばらしい点だ。
次回に続く。
ブログサイトにも載せました。
門 伝也 (もん でんや)