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 最近の研究の動向を把握するためや、営業活動で、企業や大学関係者と接する
機会があります。その際、「産学連携」について色々なご意見をお伺いすること
があります。今回は、そのいくつかについてコメントも交えてご紹介いたします。



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 1:特許に対する価値観の違い
企業側の指摘:「ちょっとした特許、どんな特許でも製品に採用されれば大金になると考えている大学関係者が多い」 DVD、携帯電話、ICカードなど単一の特許で成立していない製品では、使われている特許1件あたりの価値は低くならざる負えません。なぜなら、この特許に1%、この特許に1%とロイヤリティを設定していくと、あっというまに利益どころか製造原価を超えてしまう可能性があります。特に現在の低価格化競争(狂走?)時代ではさらに厳しいものがあります。企業同士では、パテントプールというメカニズムや、単独クロスライセンス契約をつかって妥当なところに抑えようとする思惑が働きますが、大学(国)がからむと、なかなかそうはいかない。
 また、こんな指摘もありました。「素材の製法特許など、その製品に含まれる特許の数が少ないものは、製品単価にロイヤリティを付加すれば済む。大学は、大金を狙うなら、素材を重視すべき。」
 素材の製法はノウハウとも密接に関係しています。ノウハウも含めて企業側に技術移転をすれば、全てはまるく収まるのでしょう。
 では、当社が、重点調査テーマとしてあげている「ナノテク、半導体、バイオ、およびそれらの融合領域」ではどうなるのでしょうか?なかなか、うまい枠組みはありそうもありません。でも、枠組みにこだわっていては、どんどん欧米との(特許)格差が広がるのみでしょう。どんどん研究をし、どんどん特許を出し、そして企業ともめたら「訴えてやる!」にならざる負えないのでしょう。
 他方、早い段階から大学と良好な関係を築き、安いロイヤリティを設定してもらえた企業は優位な競争を展開できるとも思えます。
ここで、定理:「産学連携は大学、企業、双方の2極化を加速する。」証明は、省略。

2:特許の共有規定に関する不満 大学と企業の共同開発にかかわる共有特許の取り扱いについて不満を感じている企業人は非常に多いです。
 通常の企業間の共有特許の場合、お互いが実施するにあたりロイヤリティの支払いが発生しないことが多いです。ところが、大学(国)との特許の共有の場合は、大学(国)が特許を実施する(製品を製造する)ことがないことを考慮して、共有特許を共同研究企業が実施しようとする場合、大学(国)にロイヤリティを納めないといけないというのが通例になっています。これが、企業側が共同研究を行おうとする際の心理的障壁になっていると思われます。なぜなら、大学(国)は、ロイヤリティ収入がなくても、つぶれる恐れはなく、圧倒的に強い立場で、ロイヤリティ交渉に臨めるからです。(他方、IPベンチャーの場合は、ロイヤリティ収入がないと開発投資が回収できず、会社がつぶれる恐れがありますから、適当な値で妥協できる可能性があります。)また、大学(国)側の手続きに時間がかかるという懸念もあります。

3:「産学連携といえば上場企業との連携であると考えている大学関係者が多い。」
 これには、同感です。研究費をたくさん出してもらえる、文部科学省に報告するときに箔がつくなどあるかとは思いますが、。。(省略)。。
 「上場企業との産学連携」と「大学発のベンチャー」。発想的には水と油ではないかと、筆者は感じています。
 「大学発のベンチャー」がなかなかうまくいかない背景に「上場企業との産学連携」を重視する発想がないだろうかといぶかります。

4:産学連携の触媒としての特許情報
 大学と企業の知的財産権活動を比較すると大きく差があるのは、特許調査にまつわる部分ではないかと考えています。
 大学側の重要度は学術論文が最優先であり、特許はその次(の次)です。
企業では、圧倒的に特許情報の方が重要視されます。
 企業側はどのような特許が「痛い特許」かを実体験を通して把握しています。
ところが大学側では、把握できない。その結果、大きな価値観の相違が生まれてきます。
 産学連携をうまく進めるには、特許情報の把握のレベルを産と学の間で平準化することが必要です。特に金になる米国特許についてそれを行うことが重要であると思われます。(米国)特許情報は産学連携の触媒となりうると考えます。



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2008.11.25 Tue l 特許探検隊分室 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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