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 MEMSはMicro Electro mechanical systemsの略で、非常に小さな構造を持った機械などをさしています。

 

これはいわゆる最近話題のナノテクノロジーと呼ばれる技術の入り口に当たるものです。

初めてMEMSの話を知ったのは、

電子顕微鏡の画面の中で、くるくると回る静電モーター。「何につかうんじゃい」と、思わず口にでました。ところがところが、それが進歩を重ねて、TIのDMD(デジタルミラーデバイス)という形で、表に出てきました。あの美しい画面を見たときに、くるくると回る静電モーターが頭をよぎり、感動的でさえありました。

 DMDとは、小さな鏡を背負った止め具が、静電気によって、傾いたり、傾かなかったり。その背負った鏡に光をあてておくと、その反射光は、ある方向に飛んだり飛ばなかったり。

 そういう傾き装置付の微小な鏡が、平面状に無数に並んでいるのです。

それがDMD

画像情報に合わせて、平面内にある鏡に向きを変えてあげると、

そう、!、絵が見えるのです。

それをレンズを介してスクリーンに投影すれば、ちょっと映画館の完成です。

面白いのは、その半導体チップを上から覗き込んでも絵が見える

不思議、不思議。小人が何か魔法を使っている

では、MEMSに関係した他の技術について見て行きましょう。

以前、行った米国特許の権利者別の分類集計から興味深いものをいくつかリストアップしていきます。(順不同)

 目立つ会社の1つとしてアナログデバイスという会社があります。 

これは、アナログの半導体デバイスではかなり有名な会社です。その中で、結構面白いものがあります。

その1つにマイクロマシンドジャイロというものがあります。 

 これはアブストラクトを見ていると、まさにマイクロマシン微細加工技術を用いて作ったジャイロスコープのようです。

特許番号=6,122,961

成立日=( September 26, 2000 )

 

特許の名称=Micromachined gyros.

 ジャイロスコープってなんでしょうか?

実は身近にたくさんあります。

カーナビにも、デジカメにも、さらにはケータイにも。

角速度=回る速さを測るものです。

カーナビでは、電波が来ていないときに、車の向きを知るのに使います。

デジカメでは、手ぶれ補正にも使っています。

被写体がゆれるのと、カメラがゆれるのとを区別できます。

 ジャイロの歴史は古いです。地球ゴマって覚えていませんでしょうか? 鉄のわっかの中で円盤がくるくる回るやつです。

あのこまをまわしながら、こまの向きを無理やり変えようとすると、手に反発力を感じませんでしたか?

この反発力は、向きを変えようとする回転の速度に依存しています。

逆に、この反発力を測定できれば、回転の速度(角速度)を知ることができます。 なお、この角速度は、地球ゴマの回っている速度ではなくて、地球ゴマ全体を鉄枠がついたまま、手で無理やり回そうとする速度のことです。ご注意。ご注意。

 今のカーナビやデジカメには、こういう地球ゴマは入っていません。半導体の技術を使って作られた小さい、小さい、角速度センサー(ジャイロ)が入っています。

 ジャイロには地球ゴマのように回転を利用するもの。

振動を利用するもの。光を利用するものがあります。

 先ほどの特許はそのうちの振動を利用するものの子孫です。

 ちょっと想像してみてください。

丸太のブランコ。板とか太い棒の両端がつるされていて、その丸太にまたがってブランブランするやつです。

 ここからは、思考実験です。頭の中でやる実験です。

直径3メートルくらいの円盤を公園の真ん中にに設置します。

 その円盤の上にさきほどの丸太型ブランコを無理やり載せます。

ブランコを揺らしながら円盤をくいっとまわしてみましょう。

ブランコはそれなりに重いので、円盤の回転についていけずに、ちょっと横にずれる、横に動こうとします。

この動こうとする程度を調べてあげて、逆に乗っかっている円盤の回転スピード(角速度)を調べようってのが、振動型ジャイロの原理です。

でも、ブランコの支柱があれば高さが高くて、デジカメには入りません。そこで、支柱をやめて、板バネで水平に支えて見ましょう。

ここまで、くれば半導体の技術でぐっと小さくすれば、MEMSジャイロの完成です。 特に高さを下げます。なんで、高さを下げるかというと、半導体は半導体チップと呼ばれるように薄いものなんです。薄さ数100ミクロンで、大きさは数ミリあります。高さの方が苦しいのです。

 先ほどの特許はこの振動型ジャイロのMEMSの場合の最初の特許ではありません。改良特許です。精度をあげることを目標にしています。

精度があがればカーナビの精度も上がります。ちょっとゆっくりとハンドルを回したような操作も検出してくれます。電波が来ていない場所でも、カーナビがそれなりに地図をたどってくれます。精度が悪いと、地図を正確にたどれなくて、電波が来たとたんに、車が別の道路にワープしちゃいます。

 MEMSは現在では、いろいろな分野に普通に使われています。

光や電波、電流を操作するためのMEMS。

マイクロアクチュエーターと呼ばれる、小さなものを動かすもの。

インクジェットプリンタのためのインクをペッと吐き出す部分。

まさに、小さな力持ちたちです。

 では、他の特許をいくつか見ていきましょう。

 マイクロメカニカルシステムを使った加速度計関係アプライドシグナルインクという会社から出ています。96年くらいまでさかのぼっています。 

 カリフォルニア工科大学もいくつか成立させています。フォログラム関係、薄膜エレクトロニクスホンプ分析機器関係、それからアクチュエータリレー等があります。なかなか多彩です。 

 次に目立つのは、コーネルリサーチファウンデーションから出ているものがあります。これは、マイクロメカニカルシステムを作るためのプロセスおよびその装置関連にかなりいろいろな特許を成立させているようです。また加速度計関係も散見されます。 

 次に目立つ会社としては、カメラやフィルムで有名なイーストマンコダックがあります。 

 イーストマンコダックは、光変調機格子デバイスメカニカルグレイティングデバイス、等、光関係のものが多いです。 

 意外なところでは、フォード自動車からも、MEMS関連の特許が出願成立しているようですが、マイクロモータデバイス関係を体系的にやっているような気がします。 

 フォードモータの特許を見ていると、運動を感知するためのセンサーもかなり出ています。 

 次にジェネラルエレクトリックGEについて見ていきます。GEではスイッチ関係が多いです。フォトニックスイッチ、交換機用と思われるコンタクトスイッチ等もMEMSで開発しようとしているのでしょうか。 

 次にHP(ヒューレットパッカード)を見ていきます。HPの場合は、プロセス特許、シリコンマイクロストラクチャーをいかにつくるか。それから、ヘッドドライブ関係があります。クロマトグラフィー等、計測関係もあります。プリンター関係もいくつかあります。プリントヘッド、インクジェット関係です。 

 次に日立を見ていきます。日立の場合は、まず目についたのが化学分析装置があります。光学関係、スキャニングプロブマイクロスコープ、走査型プローブ顕微鏡(STM)です。 

 次はハネウエルという会社を見ていきます。超小型のポンプのような特許もあります。ステッパーのモーターのような特許も出ています。あとはリレイ関係のものもあります。マイクロアクチュエーターマイクロサーマルクーラー等、面白そうなものがあります。ディスプレイ関係もあります。 

続いてルーセントテクノロジーのものを見ていきます。プロセス関係、ファイバー関係も多いようです。光関係、メカニカルオプティカルデバイス、光を組み合わせたような特許もいくつか出ています。スイッチ関係も多いです。 

 会社名にMEMSが入っている、MEMSオプティカルインクという会社があります。まさにMEMSとオプトを組み合わせたあたりにいくつかの特許を出しています。マイクロレンズ関係、シャッター関係もあります。 

 次はマサチューセッツ工科大学MITを見ていきます。マイクロモーター、マイクロモーター等を作るための製造プロセス、センサーおよび、センサー関係があります。 

 DRAMで有名なマイクロンテクノロジーもかなりの件数を出しています。リソ関係とフラットパネルデイスプレイっぽいものも結構あります。 

 次は通信で有名なモトローラを見ていきます。マイクロエレクトリカルスイッチが目立ちます。R/F高周波スイッチ関係が多いです。

 次にナショナルセミコンダクターを見ていきます。リソデータ、共振器関係、トランスデューサーが何件か出ています。

 サンディオコーポレーション、ここは化学と組み合わせた特許を出しています。面白そうな会社です。 

 次はシルバーブロック研究所から非常に多くのインクジェットプリンター関係の特許が出ています。 

 次にTRWという会社です。MEMSを用いた共振器スイッチ関係R/Fスイッチ関係が多いです。 

 次は、DSPで有名なTI(テキサスインスルメンツ)です。TIにはデジタルミラーデバイス(DMD)という技術があるのですが、さすがにこれに関係したプロセスがらみの特許が多くあります。しかし、注目するものとしてはR/Fスイッチもかなりあります。TIはアナログも強いですからこの辺に注力しているのかもしれません。 

 次はカリフォルニア大学を見ていきます。ここもなかなか多彩です。センサー、遺伝子関係プロティンコントロールシンセシスもあります。アクチュエーター、ジャイロスコープ、センサー製造方法、光学スイッチ(結構多い)。なかなか多彩にやってます。 

 次にミシガン大学、製造方法、どうやってMEMS構造を作るか!という特許が目立ちます。後、センサー関係、共振器。 

 次は米国政府の空軍マイクロミラー関係、光スイッチアンテナ関係。 

 次に海軍からは、センサが多いでしょうか。MEMSモーショントランスレーション、モーションセンサー、等が結構あります。 

 陸軍は、リッチセンサー、スイッチ回路、スイッチデバイス関係が多いです。 

 次にウイスコンシンリサーチファウンデーションではマイクロエレクトリカル、MEMSデバイスの製造方法が多いです。X線リソグラフィーに関係した特許も出ています。 

 次はゼロックスです。MEMSミラー関係、プリンター関係、流体制御関係、マイクロレンズ関係分光系、モノシリックスペクトルフォトメーター(一体化された分光系でしょうか)、MEMSミラーのコントロール関係、セルフポジショニングミラーストラクチャー、マイクロデバイスをダイシングするための方法、特許等があります。

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  探検隊長より 

今回、MEMS関係の特許を企業中心に見てきましたが、非常に多岐に渡っていることがわかりました。

またプレイヤーも非常に多く非常にユニークな取り組みがなされています。

特にアメリカの大学が盛んなような気がしました。

後、アメリカ政府、軍関係の特許が結構ありました。非常に面白い調査対象であったと思います。

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2008.12.04 Thu l CNET連動企画 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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