日経エレクトロニクス2009.3.9の記事「特許で揺らぐ無線LAN」を読んだ。
バッファローが(テストケース?として)、サイロから無線LANの「基本特許」で訴えられていて、世界中の同業者が注目しているとのことだ。
このサイロは、パテントトロールとかの企業ではなく、オーストラリアの国立研究機関である,
Commonwealth Scientific and Industrial Research Organizasion (CSIRO)なのだそうだ。
日本で例をあげれば、独立行政法人となった理化学研究所みたいなところだろうか。
素朴に、どういう研究所なんだろうかと思った。
ぐぐると簡単にWEBページを見つけることができる。
色々なことをやっているようだ。
http://www.csiro.au/
には、Science Highlightsとして、
The science of climate change
Researching enzymes to improve our world
Bushfires overview
Broadband wireless connecting Australia
などがあげられている。
むむむと思い立って、米国特許調査をやってみた。
まず、え"と思ったのは、権利者名として、
"Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation"
と
"Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization"
の二つがあることだ。
前者で約300件、後者で約200件の特許がある。
この権利者名の違いがお分かりだろうか?
(老眼の私にはなかなか違いが分からなかった。。。)
前者はOrganizationのZがSになっているのだ。
Organization=(米語表記)
Organisation= (英語表記)
となるようだ。
ちなみに前述のホームページでは、Sの機構となっている。
(権利者名で検索を行う場合は、ご注意。ふわっとした検索が好ましい。
あまりがっちりとつかむと潰してしまう。)
さて、脱線してしまった。
1980年から2009年2月末までに成立している特許が約600件ある。
特許の共有関係で言えば、比較的単一所有が多いようだ。
その中で、デュポンとの共有特許は、若干数があり目を引く。
http://www.cerbonics.net/~semi2/PAY/CSIRO/htm/AN_pri_year/E_I_DU_PONT_DE_NEMOURS_AND.html
化学系の特許だ。
では、米国特許から見た活動領域を把握するために、筆頭米国分類を見てみよう。
最も件数が多いのは、米国分類435だ。次は、424.
共にバイオ、医療系だ。
http://www.cerbonics.net/~semi2/PAY/CSIRO/htm/CCL3_pri_year/ccl_435.html
http://www.cerbonics.net/~semi2/PAY/CSIRO/htm/CCL3_pri_year/ccl_424.html
さてさて、無線LANはどこだろうか?
日経エレクトロニクスによると、問題となっている米国特許は
5,487,069
http://www.cerbonics.net/~semi2/PAY/CSIRO/htm/shoshi/5487069.htm
だそうだ。
要約をみると、(機械翻訳で申し訳ないが、)
「本発明はワイヤレスLAN、ピア・ツー・ピア・ワイヤレスLAN、ワイヤレス・トランシーバおよびデータを送信する方法を開示する。」
http://www.cerbonics.net/~semi2/PAY/CSIRO/htm/abstract/abstract_5487069.htm
これですね。これ。
クレームを見る。
http://www.cerbonics.net/~semi2/PAY/CSIRO/htm/claim/claim_5487069.htm
総クレーム数は70あまり。
独立クレーム数は、10程度だ。
きっちりと、特許対策を行っていて、漏れのないクレームを作っているという印象を持つ。
また、この特許に、割り振られた米国分類を見ると、
370/404 ; 370/338; 375/284; 375/348; 455/506; 455/65
となっている。
解析母集団の中には、
370、375,455としては
下記の特許がある。
5487069 Wireless LAN.
6879579 Medium access control protocol for data communications.
6512795 Error concealment for video services.
6339709 Personnel locating system.
7043195 Communications system.
。。。題名からして、さらに火を噴くかもしれないなー。。。。
さて、先の069特許の発明者は下記の5人。いずれの人もオーストラリア国籍のようだ。(AUがついている。)
O'Sullivan; John D.:AU:,
Daniels; Graham R.:AU:,
Percival; Terence M. P.:AU:,
Ostry; Diethelm I.:AU:,
Deane; John F.:AU:
ところが、いずれの発明者もこの組織の中では数件の特許に名前を連ねているに過ぎない。
どうも、ことの大きさに比べて発明者の影が薄いという印象だ。
さーーて。ここからは独断に基づく解釈だ。
先の日経エレクトロニクスの記事によると、
『「かなり大きな金額だぞ」とバッファロー社内は揺れた」とある。
さもありなん。サイロの知的財産管理者(弁護士)は、バイオやメディカル特許を主に見ている。
バイオやメディカルは製品に使われている特許の数が比較的少ないので、特許あたりのライセンス料の要求が高くなりがちだ。それに対して半導体などは、数百、数千という特許が絡んでくるので、相対的に特許あたりの価値は下がり、ライセンス料率は、特許あたりでは低く抑えられがちだ。
しかも、実績として、金払いのよさそうな、デュポンとかがいるんじゃないだろうか?
ところで、バッファローは本当に戦うべきだったのだろうか?
儲けたのは、訴えた側の米国弁護士と訴えられた側の米国弁護士だった。
というのはよくある話のように思える。
今後、米国特許がからんで、米国内で、米国外の企業同士の訴訟が頻発すると見る。
まさに外貨獲得の手段だからだ。ご注意、ご注意。
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門 伝也 (もん でんや)