ISSCC2010に参加した。
筆者的報告(感想)だ。
有機半導体の分野がなんだか楽しいことになっている。
キルビーによって集積回路の時代が切り開かれた。
まさに、その特許明細書にあるような写真を見たのだ。
基本単位デバイスから引き出された接続領域(パッド)につながるむき出しの配線。
それらの配線がさらに複雑に引き回され回路を構成している。
さらになんと、その相互接続はインクジェットプリンタで描くこともできるのだ。
動画のデモも見た。どこの家にでもありそうなプリンタにインクが挿入され、じゃかじゃかと音を立てて回路配線が描かれる。
後に、発表者に質問をしてみると配線だけではなくてトランジスタなどのデバイス部分もインクジェットプリンタで形成するべく研究がすすめられているとのことだ。
近い将来、全プリンタでシステムができあがるのに違いない。
有機半導体の課題は動作速度のようだ。裏を返せば、放熱の問題が少ないと言える。
10層程度の積層は容易だろう。3次元で動作が遅いデバイス。
イメージは必然のごとく、脳にたどり着く。面白い発表が今後も続くだろう。
夢の宝庫だ。
筆者のルーツはメモリーだ。メモリーのセッションをみると定性的な基本部分はあまり変わらず、デザインルールなどの定量的な進歩の話と、枠組みを変えてしまうような革新の話とがある。
前者に属する発表を聞くとなんだか過去にタイムスリップしたかの錯覚にとらわれる。若かったころの苦しくも楽しかった思い出が蘇り、幽体離脱の体となる。
革新の話では、その昔、理想と信じたメモリ方式が現実の取り組みとして、目の前にまさに現れた。
配線の交差部がメモリになる。それだけ。
トライしているのはシリコンバレーベンチャーだ。
日本では景気の悪い話ばかりで、縮み上がっているときに、ここにはメモリ冒険者達がいる。
嬉しくなって、講演者に名刺交換を求めに行った。
一昔前なら、決してISSCCに投稿すらされなかったであろう話も立派なセッションをなしている。
バイオからみ、医療からみだ。痛みを和らげたり、検査をしたり。
そういう分野には、やさしい半導体が必要になる。ヒートシンクが必要な野蛮なデバイスでは、低温やけどを起こしてしまう。
低消費電力、低エネルギー通信と具体的な開発課題に落ちていく。
有機半導体との相性もいいに違いない。
技術の転換点は再生のための起点でもある。
後の世代の技術史研究者が2010年を特別な年として記憶するように期待したい。
門でんや。
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