今日は、脳型コンピュータについて調べた結果について報告します。
脳型コンピュータは以前、ニューロコンピュータとして研究されていた分野と多
くの共通点を持ちます。
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まず、全体の傾向について、 権利者別分類優先年表示を見ていくと、どの企業も技術起源が1990年代前半のものが多いことが分かります。前回の「ニューロブーム」の時のものだと思われます。アプリケーションとして目をひくものとしてレントゲン写真などの解析があります。
プレーヤーとしては、コンピュータメーカーなどが多いですが、医療機器やカメラ関係の企業も見受けられます。
興味深いものをいくつか見ていきたいと思います。
コダックからは、「学習できるカメラ」や使用者の「心理状態を把握」するための特許などが出ています。
DRAMメーカーであるマイクロン社からは歩留まり向上のためにファジーやニューロを用いるという特許が出ています。
米国陸軍からは、「精神的な決定を推定する方法およびデバイス」なる特許が出ています。視線検知、脳波測定、情報表示を行って意思決定を支援する装置のようです。SFに出てきそうな話ですね。
IBMからはコンピュータウィルス検知のためにニューロを用いるという特許やジョブスケジューリングに関する特許が出ています。
今回はある特定の特許群に注目して明細書を見ていきたいと思います。選んだのはIBMの約10件の特許群で、技術起源が1990年に遡るものです。
これらが、1992年から1997年にかけて成立しています。
特許の題名は「アプリケーションプログラムのためのニューラルネットワーク・シェル」で全て同一です。分割や継続を繰り返して成立させているところから、重要な特許ではないかと推定されます。
アブストラクトによると、「ニューラルネットワーク・シェルと入出力を行うことによって、いかなるアプリケーションプログラムも、ニューラルネットワーク・アプリケーションプログラムになる」というものだそうです。「ニューラルネットワークモデルが面白くて理論的に強力であるにもかかわらず、それらは柔軟性がなくて使用するのが困難である。」「ニューラルネットワークの知識を有する非常に熟練したプログラマは、1つのニューラルネットワークモデルの機能を取り入れるために専門アプリケーションプログラムを書き込むことを必要とする。」「これは、明らかに好ましくない人および貴重なプログラム・リソースの浪費である。」とのことで、ニューラルネットワークの機能を備えたプログラムを簡易に得るための環境のようです。アプリケーションプログラムとニューラルネットワークモデルの間をつなぐ機能をもつシェル(プログラム実行環境)を提供することを目的としているようです。インターフェースを定義することで、「ニューラルネットワーク・シェルと入出力を行うことによって、いかなるアプリケーションプログラムも、ニューラルネットワーク・アプリケーションプログラムになる。」と断言されています。(す、すばらしい!) 特許群全体での総クレーム数は約90です。開示されている内容は、上層にアプリケーションへのインターフェースがあり、その下の階層にニューラルネットワークユーティリティプログラムがあり、そこでネットワークの定義、生成、学習、実行を行うことができます。
そのさらに下層にはニューラルネットワークデータ構造があり、そのさらに下層にニューラルネットワークモデルプログラムがありそこで種々のモデルを利用できるようになっています。ちょうど、OSの階層構造に極めて似ています。というか、ニューラルネットワークをサポートしたOSを作ろうとしているかのように見えます。
アプリケーションを実行する際に、下層の足りないものを順次追加しながら全体としてニューラルネットワーク対応の処理系を自動生成しようとする企てであると思われます。
今、OSのもつソフトウエアの階層構造がどこか1社の特許となっていたら、すごいことだと思うのですが、ニューラルネットワークという枠組みの中でそれを目指す取り組みだと感じました。
探検隊長より
ソフトウエアについては門外漢なのですが、昨今のソフトの重要性、ソフトウ
エア特許の重要性、半導体を含むハードウエアとの関係を考えると、ソフトウエ
ア特許もウォッチしていかないといけないなと感じたしだいです。
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